冷却塔(クーリングタワー )の設置場所によるトラブルの違い
こんにちは、「冷却塔トラブル改善プロ」の杉山です。
冷却塔(クーリングタワー)は、設置している場所によって色々なトラブルが起こることを、ご存知でしょうか?
一つの現場だけ見ていても違いには気が付かないのですが、私たちプロは、日頃から色んな現場のタワーを見ています。
なので、違いがわかるんです。冷却塔マイスターとでも呼んでください(笑)
それでは、冷却塔(クーリングタワー)の設置場所による違いをご紹介します。
粉塵の多い工場に設置されている場合、
冷却塔が風とともに粉塵を吸い込み、水槽の底に汚泥が堆積していきます。
溜まった汚泥は、循環ポンプ入り口のストレーナを詰まらせ、水が循環できなくなるトラブルが起こります。水が循環しなくなると、設備の冷却ができなくなり、緊急停止となります。
粉塵の多い現場は、定期的に底に溜まった汚泥を水で洗い流してください。
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冷却塔が連続稼働している設備の場合は、小形のバキュームポンプで汚泥を吸い取り除去します。
粉塵が多いと、充填材への付着もひどく、濡れ渇きを繰り返しているうちに固化してきます。最後は、充填材が目詰まりし風が通らずに、水が冷えなくなります。
粉塵の多い現場では、最低でも年1回は、冷却塔(クーリングタワー)の高圧洗浄を行ってください。清掃せずに放置したままだと、汚れが落ちなくなり、充填材の交換が必要になります。粉塵の多い現場だと、5~10年で充填材交換となります。
定期的に清掃を行うだけで、数十年は使い続けることができます。充填材の新品交換は、かなりコストが掛かりますので、日頃メンテナンスを行うことで設備延命へとつながります。
燃焼系の排気ガス煙突が近くにある場合、
排気ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)を風とともに吸い込み、ガスが冷却水に溶け込むと硝酸が生成されます。
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硝酸が含まれる冷却水は、酸性化しますので配管などが腐食します。
更に、冷却塔(クーリングタワー)では水が濃縮しますので、硝酸濃度が濃くなりpHが下がり続けます。
下の写真は、密閉式冷却塔のヘッダ配管です。腐食でボロボロになり、水漏れが起こる寸前です。こうなると、10年ほどで冷却塔を新品交換となります。
車の排気ガスも同じです。国道沿いなど車の通りが多い場所は、腐食に注意が必要です。
スクラバーなどの排ガス処理装置が近くに設置してある場合、
同じく排気ガスを冷却塔が吸い込み、ガスの種類によって影響を及ぼします。
酸性ガス(塩化水素、フッ化水素など)の場合は、冷却水が酸性化し腐食が起こります。
有機溶剤系ガス(トルエン、メタノールなど)では、有機物が藻や細菌(スライム)、レジオネラ属菌のエサとなり繁殖します。食品工場のダクトから出てくる臭いも、雑菌などを繁殖させます。
冷却塔周辺で、臭いが漂っている場合は、水質になんらかの影響を及ぼしていると考え下さい。
工場で有機溶剤を使用されている場合、有機溶剤の臭気が冷却水に溶け込み、藻やコケなどの微生物のエサとなり繁殖が活発になります。そのためストレーナの詰まり冷却水が流れなくなることで、冷却水の循環不良が起こり、水温が上昇し生産が止まります。
その改善方法について、YouTubeでも解説しています。
設備を計画する前に、外部からの影響を考慮して設置すればいいのですが、実際、プラントを計画する段階では、こうした目に見えな事を想定するのは難しいです。水は様々な外的要因によって、トラブルを引き起こします。冷却塔(クーリングタワー)や生産設備を長持ちさせるためには、普段から水質管理や清掃などメンテナンスがとても重要です。