冷却塔とは

冷却塔(クーリングタワー cooling tower)とは、冷却水の熱を放熱させて水温を下げ、再び冷却水として循環利用させる設備です。冷却塔は外気を大量に吸いこみ水を冷やすため、多くは建物の屋上や工場敷地の屋外に設置されています。ビル空調用では吸収式冷凍機やターボ冷凍機、工場設備では工業用炉やコンプレッサーなど、発電設備では蒸気タービン復水器の冷却として冷却塔は使われています。

冷却塔の仕組みや構造

冷却塔は、循環する冷却水を気化熱によって熱を奪い水温を下げています。気化熱とは、水が蒸発する際に周囲の熱を奪う現象のことです。熱いお茶を飲むときに息を吹きかけて冷ますのも気化熱を利用した冷まし方です。この原理を利用しているのが冷却塔(クーリングタワー)です。
冷却水は、冷却塔内の充填材と呼ばれる塩ビ製の薄い波板を伝って上から下へと流れ落ち、送風機(ファン)で送られる風と接触し水が蒸発します。この蒸発する際の気化熱によって水温が下がり、再び冷却水として循環利用できるようになります。
冷却塔の形状には、大きく分けて丸形と角形の2タイプがあり、さらに角形冷却塔には冷却水と外気の接触方法の違いで、開放式と密閉式の2種類があります。

丸形冷却塔の特徴

丸形冷却塔は、向流式(カウンターフロー方式)と呼び、上から落ちる水に風を下から当て冷却します。冷却能力が100冷却トン以下で多く使われます。

角形冷却塔の特徴

角形冷却塔は、直交流式(クロスフロー方式)と呼び、上から落ちる水に風を横から当て冷却します。冷却塔を複数台連結できる構図のため、冷却能力が100冷却トン以上の大型設備で使われます。
また、角形冷却塔には開放式と密閉式があります。

開放式の冷却塔

開放式冷却塔は、循環する冷却水に直接外気をあてて水温を下げます。メリットは、冷却塔の構造がシンプルなため安価です。
デメリットは、冷却水の水質が悪化すると冷却系統すべてでスケール障害や腐食障害、藻の繁殖が起こります。これらの障害から設備を守るため冷却水の水質管理が重要となります。

密閉式の冷却塔

密閉式冷却塔は、冷却水系統が密閉回路になっており熱交換器の内部を冷却水が流れて、熱交換器の外側を散布水により冷却されます。メリットは、冷却水は外気に触れないため汚染されず、水の濃縮も起こりません。そのためスケール障害が発生せず設備が長持ちします。
デメリットは、冷却塔の構造が複雑のため高額です。開放式と比べ価格が約2~3倍します。外気と接触する散布水の水質管理をおこたると銅コイルの伝熱面でスケール障害が起こり、冷却能力が低下します。また、密閉回路内の冷却水では溶存酸素の影響で金属の腐食が起きるため、防食剤の添加が必要です。
冬場は、冷却水が凍結すると銅コイルが凍結破損しますので、凍結防止用ヒータによる加温や密閉回路内の水を抜くなどの凍結対策が必要です。

冷却塔の各部の名称とはたらき

冷却塔(クーリングタワー)は、以下の部品によって構成されています。

本体側面

冷却塔(クーリングタワー)の外部を覆うプラスチックやFRP製のケーシングです。

充填材

薄いプラスチック素材の波板を何十も重ね合わせ、一体化させたものです。充填材に冷却水を掛けて、水の表面積を広げ冷却効率を上げています。

エリミネータ

充填材からでる飛散水(水しぶき)を補足して外部への飛散を防いでいます。

冷却ファン

冷却塔(クーリングタワー)に外気を吸い込み、冷却水に風を当てています。

電動機

冷却ファンを回転させる電動機です。

駆動ベルト

電動機と冷却ファンをつなぐVベルトです。

鋼コイル

密閉式冷却塔の熱交換器です。内側を冷却水が流れ、外側を散布水で冷却しています。

上部散水槽(角形冷却塔の場合)

冷却塔上部に設置され水槽の底にあいた多孔より、冷却水を充填材に散水しています。

スプリンクラー散水装置(丸形冷却塔の場合)

中心の回転部に取付けられた散水パイプが水圧で回転し、冷却水を充填材に散水しています。

下部水槽

充填材を伝って水温が下がった冷却水が溜まる水槽です。

ストレーナ

循環ラインへの異物混入を防ぐメッシュ(金網)です。

ボールタップ

蒸発やブローで減った水を補う自動給水装置です。

膨張タンク

密閉配管内で、水の温度上昇で体積が膨張した分を逃がすタンクです。

冷却水ピット

冷却塔に併設され冷却水を溜めるコンクリート槽やタンクです。系内の保有水量が多い場合に設置します。

冷却水薬注システム

冷却水の水質を自動で管理する装置です。詳しく以下のページをご覧ください。

冷却水薬注システムテスト機貸出し

冷却塔と冷却水のトラブル原因と対策

冷却塔は、稼働中に様々なトラブルが発生します。

  • 冷却水の水温が高い
  • 冷却水の水位が低下する
  • 冷却水がオーバーフローして溢れる
  • スライムや藻の繁殖がひどい
  • 冷却水に大量の泡が浮かんでいる
  • 冷却水のpHがアルカリ性になる
  • 配管が腐食する

どれも冷却塔にとっては致命的で、運転停止つながる恐れがあります。冷却塔が停止すれば何より冷却水の温度が下がらなくなります。
上記、故障の状態と原因、対策までをまとめてみました。

1.冷却水の水温が高い

循環水の流量が低下している

ストレーナの目詰まり
原因:冷却塔の循環水出口や、配管ライン中に取付けられたストレーナにスケール屑や藻が目詰まりしている。
対策:ストレーナを取り外して清掃する。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却水が冷えなくなる原因

循環ポンプの吐出不良

充填材の目詰まり
原因:循環ポンプの羽根車に異物噛みこみや、摩耗によって吐出量が低下している。
対策:循環ポンプが正常に吐出されているか点検する。

吸込み風量が不足している

充填材の目詰まり
原因:充填材に埃塵、スケールが付着し吸込み風量が低下している。
対策:充填材の清掃または交換する。
Vベルトのゆるみ、または破断
原因:Vベルトがゆるみ、または破断し冷却ファンが回転していない。
対策:Vベルトの張り調整または交換する。
モータの故障
原因:モータが焼損し冷却ファンが回転していない。
対策:モータの修理または交換する。

散水不良が起きている(丸形冷却塔の場合)

散水装置(スプリンクラー)の回転不良
原因:散水装置が回転せずに偏って散水している。
対策:散水装置の部品交換または清掃する。
散水装置(スプリンクラー)の目詰まり
原因:散水装置の散水孔がスケール屑や藻で目詰まりしている。
対策:散水装置の散水孔を清掃する。

散水不良が起きている(角形冷却塔の場合)

上部散水槽の散水孔の目詰まり
原因:上部散水槽の散水孔がスケール屑や藻で目詰まりしている。
対策:上部散水槽の散水孔を清掃する。

2.冷却水の水位が低下する

給水量が不足している

ボールタップの目詰まり
原因:ボールタップの目詰まり、または動作不良で給水されていない。
対策:ボールタップの清掃または交換する。
給水元バルブの閉止
原因:給水元のバルブが閉まって給水されていない。
対策:給水元のバルブを開く。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)の水位が低下する原因と改善方法

3.冷却水がオーバーフローして溢れる

過剰に給水されている

ボールタップの水漏れ
原因:ボールタップが水漏れし給水されている。
対策:ボールタップを交換する。
手動給水バルブの水漏れ
原因:手動給水バルブが水漏れし給水されている。
対策:バルブの交換を行う。
自動ブロー弁の動作不良
原因:自動ブロー弁が開いたままで給水されている。
対策:自動ブロー弁の交換または自動ブロー装置の動作を点検する。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却水がオーバーフローしている原因とは

4.配管が腐食する

周囲からガスが混入している

酸性ガスが混入
原因:工場から出る燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)硫黄酸化物(SOx)が冷却水に溶け込みpHが酸性化している。
対策:強制ブローで水の入替を行う。またはアルカリ剤を投入し中和処理する。
車の排気ガスが混入
原因:交通量の多い場所で、車の排気ガスが冷却水に溶け込み酸性化している。
対策:強制ブローで水の入替を行う。防食剤を投入する。
潮風が混入
原因:海沿いで潮風が冷却水に溶け込み塩化物の濃度が高くなっている。
対策:強制ブローで水の入替を行う。防食剤を投入する。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)の配管が腐食する原因とは?

5.スライムや藻の繁殖がひどい

周囲からガスが混入している

有機系ガス(トルエン・エタノールなど)の混入
原因:有機系ガスが水に溶け込み、微生物の栄養分となり繁殖している。
対策:殺菌殺藻剤を投入し除菌する。
食品類の臭気が混入
原因:食品工場などで臭気が水に溶け込み、微生物の栄養分となり繁殖している。ている。
対策:殺菌殺藻剤を投入し除菌する。

6.冷却水に大量の泡が浮かんでいる

雑菌の繁殖による影響

水処理剤による雑菌類の死滅
原因:殺菌殺藻剤でスライムや藻類、レジオネラ属菌の死骸が浮遊している。
対策:薬剤の注入量を増やし強制ブローで水の入替を行う。消泡剤を投入する。

7.冷却水のpHがアルカリ性になる

水質の環境変化

炭酸ガスが放出された
原因:冷却水中の炭酸ガスが放出しpHが上昇しアルカリ性になっている。
対策:強制ブローで水を希釈する。または酸化剤を投入し中和処理する。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却水のpHは、なぜ上昇するのでしょうか?

冷却塔の点検・メンテナンス情報

上記のようなトラブルを発見した場合はメンテナンス、または水質管理が必要となります。弊社がこれまで蓄積してきた知見(ブログ)がお役に立てれば幸いです。

冷却塔の定期交換が必要な部品

冷却塔(クーリングタワー)は、定期的に交換・修理が必要な部品があります。急な運転停止を起こさないために計画的な部品交換をお勧めします。

定期的に交換が必要な部品

  • 冷却ファンのVベルト・・・1年ごと
  • 冷却ファン軸受け・・・3~5年ごと
  • 電動機ベアリング・・・3~5年ごと
  • 充填材、エリミネータ・・・10~15年ごと

詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)のファンベルトは点検されていますか?

充填材のトラブル

充填材の役割とは

充填材とは、塩化ビニル樹脂(PVC)製で厚さ0.5ミリほどの波板を何枚も重ねて接着されたものです。水が充填材を伝って流れ落ちることで、水を風の接触面積が広がり効率よく気化熱によって水を冷やしています。

充填材が原因で水が冷えなくなる

充填材に塵埃、スケールが付着し目詰まりを起こすと水の流れと、風の通りが悪くなり冷却水が冷えなくなります。
充填材は、水処理薬品を使用していても目詰まりを起こします。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)に薬剤を使っているのに、充填材が汚れる理由

冷却塔セルフ清掃のススメ

冷却塔は、性能の維持や衛生面で月に1回以上の清掃が必要です。セルフ清掃とは、特別な道具を使わずに1~2時間で出来る簡易的な清掃をご紹介しています。セルフ清掃を行う前にチェックする事として、角形冷却塔と丸形冷却塔の清掃方法の違いなど、以下のページをご覧ください。

セルフ清掃のススメ

冷却塔の省エネ運転方法

冷却塔(クーリングタワー)の省エネルギー対策として、冷却ファンをコントロールする方法をご紹介します。

冷却ファンの台数制御

冷却塔の冷却ファンが複数台ある場合、設定された水温に応じて運転台数を制御する方法です。

冷却ファンの発停制御

冷却水の水温に応じて、冷却ファンをon-offさせる制御方法です。on-offの頻度が多いと起動時のVベルトのスリップで摩耗が激しくなります。

冷却ファンのインバータ制御

冷却水の水温に応じて、インバータで冷却ファンの回転を無段階でコントロールし制御する方法です。

冷却塔の水質管理

冷却塔(クーリングタワー)は、水を蒸発させて水温を下げているため、循環しているうちに水に含まれるカルシウム・マグネシウム・シリカ・塩化物などが濃縮されます。過剰濃縮になると水の中で飽和状態となり系内の配管や熱交換器、冷却塔の充填材などにスケールが析出してきます。腐食の進行や、藻の繁殖、レジオネラ属菌の増殖など濃縮によって様々なトラブルを引き起こします。そのため、冷却水は定期的な水質管理を行う必要があります。
詳しくは以下のページをご覧ください。

水質管理が必要な理由

冷却水の濃縮を防ぐ方法

強制的にブローダウンを行う方法

冷却塔の運転中、連続的にブローダウンで汚れた水を排水する方法です。
補給水バルブより連続的に水を給水し冷却塔よりオーバーフローさせます。給水量は、循環水量の0.5%を目安としてください。濃縮倍率としては補給水の2~3倍程度で管理します。
給水量の計算は、冷却塔内の手動給水口より計量カップで採水し給水量を測定します。
給水量(L/min)=循環ポンプの循環水量(L/min)×0.5%

自動ブロー装置で水質管理を行う方法

冷却水を電気伝導率センサーで連続的に測定し、設定した電気伝導率の上限値で給水口に取付けた電動バルブを自動で開き給水しオーバーフローさせて排水します。汚れた水が入れ替わり設定した下限値に達すると電動バルブが閉じます。濃縮倍数より求めた電気伝導率に設定するだけで冷却水の過剰濃縮を防ぐことができます。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)の濃縮を防ぐ方法について

冷却塔の薬注装置の仕組みと種類について 

冷却水の水質管理で必要な項目

冷却塔(クーリングタワー)の冷却水は、補給水に含まれた成分が濃縮しスケール障害や腐食、スライム・レジオネラ属菌などの増殖が起こります。これらの障害を防ぐためには水質を管理する必要があり、項目ごとに起因する障害がことなります。

pH(水素イオン指数)

pH値によってスケール傾向か腐食傾向の水質かの判断基準となります。冷却水のpHは、通常7.0~9.0の範囲で水質を管理します。pHが高いアルカリ性の水質ではスケールが析出傾向になり、腐食は減少します。pHが低い酸性では腐食が増加し、スケールの析出は減少します。

電気伝導率

電気伝導率は物質の導電性を表しており、水処理では水の電解質濃度を知る指標とされています。電気伝導率が高いと、電解質の含有量が多いことになります。電気伝導率の管理値は、補給水の値×濃縮倍数により上限値を決めて管理します。

塩化物イオン

塩化物イオンとは、塩素(Cl⁻)のことで水の腐食性要因の一つです。濃縮倍数の上限を決める指標の一つです。

硫酸イオン

硫酸イオンとは、硫酸塩(SO₄²⁻)のことで塩化物イオンと同じく水の腐食性要因の一つです。濃縮倍数の上限を決める指標の一つです。

酸消費量(pH4.8)

酸消費量はアルカリ度ともいいます。水に溶解する炭酸水素、炭酸、水酸化物イオンなどを測定した値です。酸消費量が多いと、カルシウムとの結合によって炭酸カルシウムスケールができやすくなります。地下水を補給水として使用されている場合は、酸消費量の値が高い水質が多く、スケール障害には注意が必要です。

全硬度

全硬度とは、水に溶けたカルシウム硬度とマグネシウム硬度を合わせた量です。スケールを生成する大きな要因です。濃縮倍数の上限を決める指標の一つです。

シリカ

シリカはガラスの元となる物質で、硬質のスケールを生成するため、水処理では最も注意が必要です。地下水や井戸水を補給水として利用する場合、シリカ濃度が高い水質がよくあります。水処理薬剤を使用されてない水質では、上限値50mg/Lで水質管理を行う必要があります。

冷却塔の水処理薬剤とは

冷却水の水処理薬剤は、スケール・腐食・藻や細菌、レジオネラ属菌などの障害を防ぐために効果的な薬剤です。主な水処理薬品の種類として以下あります。

スケール防止剤

カルシウム・マグネシウムの硬度分やシリカなどのスケール析出を防ぐ薬剤です。

防食剤

金属の腐食を抑制する薬剤です。

スライムコントロール剤

藻の繁殖、細菌類、レジオネラ属菌の繁殖を抑制する薬剤です。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)水処理薬剤効果とは

化学洗浄の種類

冷却水で、藻の繁殖やレジオネラ属菌の増殖、スケール障害により熱交換率の低下や水量低下などが起こった場合、化学薬品使い洗浄を行う必要があります。

藻の繁殖、レジオネラ属菌などスライム系の洗浄

過酸化水素を使いスライムを酸化分解し付着物を剥離洗浄します。
詳しくは以下のページをご覧ください。

冷却塔(クーリングタワー)のレジオネラ属菌を過酸化水素で洗浄

カルシウムやシリカなどのスケール系の洗浄

塩酸系やフッ酸系の洗浄剤を使い、カルシウムやシリカを化学反応で溶解洗浄します。
詳しくは以下のページをご覧ください。

スケールで詰まった配管の洗浄

冷却塔のメーカー

全国の冷却塔メーカー一覧です。冷却塔メーカーによって規模や種類がありますので、選定する際のご参考にされてください。

上段より冷却塔の規模で記載しております。(順不同)

企業名 冷却塔の種類と規模
小規模 中規模 大規模
日立アプライアンス 丸形開放式
日本スピンドル製造 丸形開放式 丸形開放式
角形開放式
三菱ケミカルインフラテック 丸形開放式 丸形開放式
角形開放式
角形密閉式
荏原冷熱システム 丸形開放式
角形密閉式
丸形開放式
角形開放式
角形密閉式
角形開放式
空研工業 角形開放式 角形開放式
角形密閉式
角形開放式
IHIプラント 角形開放式
神鋼環境ソリューション 角形開放式
新日本レイキ 角形開放式

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