価格競争の落とし穴:安ければ本当にお得なのか?
以前、お客さんから**「歩留まりの悪い生産ラインを改善したい」** との相談を受け、改善機械を提案しました。話は順調に進んでいましたが、最終的な三社見積もりの結果、「赤字では?」 と思うほどの価格で他社が受注しました。
他社が受注したとはいえ、もともとうちが提案した機械だったので気になり、お客さんに様子を伺いました。
私:「○○さん、例の機械はどうでしたか?」
すると、お客さんはすぐにこう言いました。
「そのことを杉山さんに話さんといけんと思ってたんです。」
時期的に機械の設置も終わり、運転もスタートしているはず…と思っていたら、実際は違いました。
「工期が遅れて最悪ですよ。二度とあの商社からは買わんですよ!」(怒)
お客さんによると、商社が納期確認をせず、直前になって「間に合わない」と言ってきた とのこと。さらに、機械の図面は提出されず、仕様の確認も回答がないまま進められていました。その結果、納期の大幅遅延が発生し、工期が延長。生産ラインに大きな影響を与えてしまいました。
「なんで無責任な注文の取り方をするんですかね。杉山さんに注文する予定だったのに、値段を無茶苦茶下げるもんだから…。上司から『高い方を選ぶには理由が必要だ』と言われてしまって。」
上司の指示に従う形で、最安値の商社を選ばざるを得なかったお客さん。しかし、結果として大きなトラブルに見舞われました。
価格競争の厳しい業界では、どうしても**「安い=お得」** という発想になりがちです。しかし、安さの裏には何かしらのコストカット が潜んでいます。商社の場合、それは人件費や手間を削ること。つまり、以下のような業務が**「コストをかけられないから」** という理由で省かれてしまうのです。
- 納期確認を徹底しない
- 機械の仕様確認が甘い
- 図面や書類の準備を省く
- 工事の段取りを適当に済ませる
結果として、お客さんが最も望んでいた「安心して設備を導入できる環境」が損なわれてしまいました。
価格ではなく価値を売る
お客さんから最後に言われた**「杉山さんには見積もりばかりで、ホントすいません」** という言葉に、私はこう答えました。
「なんば言いよるですか!遠慮せんで、これからも気軽に何でん聞いて下さいよ!」
大事なのは、単に注文を取ることではなく、お客さんが本当に求めているものを提供すること。価格ではなく、「価値」 を売る商社でありたいものです。
安さだけを武器にする商社とは、たまには競合してみたいですね。