現場の厳しさと営業の本質――コンベヤ据付工事の奮闘記
暑くもなく寒くもなく、現場工事には最適な季節。今回は、お客様の工場でコンベヤの据付工事を行ってきました。
この案件、実はちょうど1年前に注文をいただいたもの。しかし、お客様の製造が忙しく、コンベヤの納入後も据付工事が半年間延期されていました。忙しいのは良いことです。
据付工事のため、メーカーにスーパーバイザー(SV)の派遣を依頼することに。しかし、ここで問題発生。
もともと担当だった営業マンとは気が合い、よく現場や営業を一緒に回っていたのですが、半年前に転勤。後任は経験の浅い営業マンで、正直なところ力不足。
SV派遣の依頼をしたところ、後任の営業マンからは何とも歯切れの悪い返事。
「工場からの予算がなくて、据付に前任の担当者を呼んでもいいですか?」
いやいや、転勤した前任者が来られるわけないだろう。それに、これはお前の仕事だ。
「前任者は日程が合わず来られませんが、自分でいいですか?」
「お前がSVできるのか?据付を失敗したら、その責任は全部お前が取るんだぞ!」
前任者にも「甘えるな」と断られ、自分からも怒られ、完全に板挟み状態。とはいえ、やるべきことはやらなければならない。予算がないなら、手出しででも工場から人を呼ぶべきだろう。
すると、工事が近づいたタイミングでようやく連絡があった。
「自分とは別の人を連れて伺いますので、日程を教えてください」
おっ、ついに腹をくくったな。
「台風の影響で工程に遅れが出ているので、土日の工事になるかもしれない。」
「できれば、平日でお願いします。」
「はぁ?お前の都合で工事日程を決めるのか?決めるのはお客様だ!ふざけるな!土曜日に決定だ!」
「土曜日でしたら、自分しか行けません…(涙)」
工事日程が決まらなかったため、直前にメーカーの工場から人を呼ぶのは難しいことは最初から分かっていた。それでもいい。営業マンなら据付指導くらいはできるようにならなければならない。
現場に入ると、工場の先輩たちに色々と据付の仕方を教わってきたようだが、プラント工事は初めての経験でかなり緊張している様子。とはいえ、SVの仕事は据付の状態を確認すること。実際の設置作業はプロの工事業者が担当する。
高さ20mのバケットコンベヤの設置が終わり、いよいよSVの仕事開始。
「よし、芯出しをやろうか。」
「はっ、はい…」
手元が震えながらメジャーで測定している。
「おい、なんか寸法が変じゃないか?」
「あっ、すいません。測り間違えました…」
おいおい、大丈夫か?
「10mm北へ移動、西へ5mm…はいOK。」
芯出しの測定を終え、SVの仕事が完了。
「はい終了。お疲れさん。」
「本日は、いい経験をさせていただき、ありがとうございました。」
今回のことで、後任の営業マンも多くのことを学んでくれただろう。
据付人員の予算がない、据付工事をしたことがない、土曜日は仕事をしたくない――そんなのはお客様には関係のない話。営業は、ただ売るだけではない。お客様のことを第一に考え、お客様のために仕事をしなければ、注文なんてもらえない。
関東や関西のメーカーや商社の営業は、現場工事が絡むコンベヤの大口注文であっても、注文を受けたら製品を送るだけ。あとは知らんぷり という話をよく聞く。しかし、九州ではそんなネクタイを締めた洒落た営業は通用しない。
お客様と共に汗を流し、困ったことは一緒に解決する。それが九州の営業スタイル。
コンベヤや機械の販売は、据付て無事に運転するまでが仕事。営業マンも、もっと現場を知り、お客様の立場で考えなければならない。
後任の営業マンくんも、今回の経験で営業の本質を少しは掴んでくれたはずだ。