Vol.07「スケール障害で配管が詰まり設備停止に」 化学洗浄と水質管理でトラブルゼロに!
スケール(水垢)が配管に付着し冷却水が流れなくなったトラブルについて、改善事例をご紹介いたします。
お客様からの相談内容
スケール障害で配管が詰まってしまい冷却水の流れが悪く、水量が低下すると流量低下のエラーが発生し設備が停止するため改善して欲しいとのご相談をいただきました。
現場の状況
電気炉の冷却用として冷却水を使用されていました。炉内は数千度にもなる設備のため、冷却水が流れなくなると破損してしまいます。
詰まっていると思われる配管を外して内部を見ると、カルシウムやマグネシウム、シリカなどのスケール(水あか)がびっしりと付着しており管内が細くなり閉塞した状態で、冷却水の流れが悪くなっていました。冷却水も過剰濃縮しておりスケール障害が起きやすい水質状態でした。
配管にスケール(水垢)が付着しやすい箇所は、流速が遅い部分や、エルボなど水の滞留が起こる箇所で固化しやすい傾向にあります。
配管にスケールが付着した原因
配管にスケールが付着した原因は、冷却水の濃縮にあります。
冷却塔(クーリングタワー)では、冷却水に風を当てて水を冷やします。水は蒸発する際に熱を奪うことで冷却水の水温が下がります。真水だけが蒸発し、水に含まれたカルシウムやマグネシウム、シリカなど不純物は濃度が高くなります。この現象を、水の濃縮と言います。
濃縮が進み、水の中で不純物が過飽和状態になると水に溶けきれずスケールとなって付着していきます。
こちらでは、冷却水の入れ替えを行われておらず、過剰濃縮の状態で使い続けられていました。濃縮は、新しい水と入れ替えることで不純物濃度が下がるので、スケール障害の予防になります。
固着したスケールを採取し、スケール分析をおこない成分を特定することにしました。分析によりスケールの成分は、ほとんどがカルシウム成分であり、炭酸カルシウムスケールだということが判明しました。
トラブル改善のご提案
固着したスケールが炭酸カルシウムだと判りましたので、化学洗浄液によるスケール洗浄をご提案いたしました。
テスト的にスケールが付着した配管を化学洗浄液に浸透させて、スケールが溶解するかを見て洗浄液の選定を行いました。
溶解する状況から洗浄時間を決定していきます。洗浄時間が長すぎると、配管や設備で使用されている金属(鉄や銅)を腐食させてしまいますので、洗浄時間の見極めはとても重要です。スケールが付着していない状態で、いつまでも洗浄液を循環していると、金属が腐食し設備を破損させてしまいます。
YouTubeの動画は、スケールを洗浄液につけて溶解テストを行っています。
スケールの成分は、水に含まれる成分によって異なります。そのため化学洗浄液は、スケールの種類に応じた薬剤の選定を行わないと溶解できません。
※機械の分解が必要な場合などは、洗浄をお断りする場合がございます。また、食品製造用水および飲料用水でご使用の配管については対応いたしておりませんのでご了承ください。
化学洗浄剤の種類
- カルシウム系スケール(硬度スケール)洗浄剤
塩酸(Hcl)主体で濃度は10%以下(劇物の指定範囲外)の洗浄剤、カルシウム主体のスケールは比較的容易に溶解できます。
- シリカ系スケール洗浄剤
フッ化水素酸(HF)(毒物に該当)を添加した洗浄剤、シリカはガラスの原料となる物質でもあり、シリカ主体のスケールは、かなり硬質なため塩酸では溶解できません。
- 有機物(スライム)主体のスケール洗浄剤
過酸化水素(H2O2)(濃度35%※劇物に該当)の洗浄剤、濃度10%以下に希釈し使用します。細菌や藻などスライム類の繁殖を酸化分解します。過酸化水素の濃度が薄いものはオキシードル消毒液です。洗浄後は、過酸化酸素分解剤を添加し、残留過酸化水素を水と酸素に分解し無害化します。
スケール洗浄作業の内容
- 対象機器の冷却水入口と出口の配管に洗浄用循環ポンプのホースを接続します。洗浄液の循環方向も同じ流れ方向で行います。
- 初めは、ポンプで水を循環させ流れるかを確認します。スケールで閉塞している場合、洗浄剤を循環させることができないので洗浄は不可です。少しでも水が流れる状態にする必要があります。詰まっていて水が流れない場合は、通常のIN側(給水)とOUT側(排水)に対して、OUT側から循環させます。逆方向から循環させることで堆積物の詰まりを排出できる場合があります。
- 洗浄剤を投入し、30分~数時間循環します。洗浄液と反応し循環水が濁り始めます。泡立ちが多い場合は、ポンプがエア噛みを起こすため消泡剤を投入します。
- 洗浄終了後、中和剤を入れて洗浄液を中和処理します。
- 排水しながら、きれいな水と入れ替え防錆剤を添加し、数分間循環させます。
- 洗浄廃液を、排水し産業廃棄物として回収します。
- 配管を復旧し、洗浄作業は終了です。
写真は、洗浄ポンプにホースを接続した状態です。
スケールで詰まっていた配管が洗浄後は、スッキリ溶解されてきれいになりました。
スケールで穴が狭くなっていても、洗浄液がわずかでも流れれば洗浄は可能です。小さな穴から洗浄液で溶解していき最後はキレイになります。
スケール化学洗浄の対象機器
以下の機器類については、スケール化学洗浄が可能です。
- 吸収式冷温水機
- ターボ冷凍機
- ブライン冷凍機
- 水冷式コンプレッサ内部の熱交換器類(インタークーラー、アフタークーラーなどの部分洗浄)
- 水冷式チラー内部の凝縮器(コンデンサー)
- プレート式熱交換器
- シェル&チューブ熱交換器
- 水冷式油圧オイルクーラー
- 凝縮器(コンデンサー)
- その他水循環冷却機器
スケール化学洗浄におけるリスク
スケール化学洗浄は、カルシウムやマグネシウム、シリカ以外に鉄サビも溶解しますので、腐食が起きている場合は、水漏れの可能性があるため洗浄できないことがあります。また、化学洗浄液で腐食を起こす材質を使用されている場合は、破損のリスクを伴いますので洗浄不可の場合がございます。
化学洗浄ができない事例
- 配管にステンレス製フレキが使用されている場合、塩酸系の洗浄液による腐食で水漏れが起きるリスクが高いため、化学洗浄はできません。
- 配管や熱交換器などがスケールで閉塞して水が流れない場合、洗浄液が通水できないため化学洗浄はできません。
水質改善のご提案
高温の設備のためスケール障害が起きやすいこともあり、水処理薬剤による水質管理をご提案いたしました。
お客様の地域では、カルシウムにくわえシリカも多く含む水質でしたので、シリカスケールにも効果的な水処理薬剤の選定をおこないました。
水質管理を導入後は、月に一度、お客様を定期訪問し冷却塔や水質管理装置に異常が無いか点検を行っています。冷却水は、毎月、水質分析を行い、分析結果をもとに水質に異常が無いかしっかりとチェックし最適な水質状態を保つようにしています。
点検作業が終わると、冷却塔点検報告書をメールでお送りしています。
当社が使用している点検表ペーパーレス化システムは、こちらになります→https://densica.com/
水質管理の月額コスト
月額費用:2万円から
別途費用:水処理薬剤 ※ご使用に応じてご購入いただきます。
『冷却塔水質安心プラン』は、専門スタッフがお客様の冷却塔(クーリングタワー)と冷却水の水質を保守管理させて頂くサービスです。定期点検による予防保全で、設備トラブルを未然に防ぎ、設備の安定稼働をご提供いたします。
『冷却塔水質安心プラン』について詳しくは、こちらをご覧ください。
お客様の声
「スケールの影響で、冷却水がほとんど流れない状態になっていて、そのたびに、数十本の冷却水の配管を交換していました。流量が回復したことで、電気炉の電極温度が下がり故障のトラブルが解消されました。ここまでキレイにスケールが落ちるとは思っていなかったので、驚きました。その後も、水質を管理してもらっていることでスケール障害によるトラブルが無くなり本当に助かっています」
冷却水管理装置のテスト機貸出しのご案内
セールスエンジでは、水の4大トラブル(スケール、腐食、スライム、レジオネラ属菌)などでお困りの方に、水質管理の効果をご実感いただくため、冷却水管理装置の無料テスト機貸出しをおこなっています。お客様の冷却塔(クーリングタワー)にテスト機を設置し、定期的に水質分析をおこない、見た目ではわかりずらい水質改善の効果を数値でご確認いただくサービスです。(水質管理装置テスト機貸出しについて詳しくはこちらをご覧ください)
冷却塔(クーリングタワー)のトラブル改善については、「冷却塔トラブル改善プロ」まで、お気軽にお問い合わせください。