株式会社セールスエンジ

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冷却塔トラブル改善プロ

Vol.08「蒸気配管の腐食による蒸気漏れ」 適切なボイラ薬剤とプロの水質管理で腐食を改善!

ボイラ蒸気ドレン水の腐食トラブル改善事例

ボイラで起きる蒸気配管と設備の腐食トラブルについて、改善事例をご紹介いたします。

お客様からの相談内容

ボイラの蒸気系統で設備や蒸気配管が腐食して、工場の至る所で蒸気漏れが起き、設備の老朽化が激しく生産に支障をきたしており困っています。ボイラには薬剤(清缶剤)を添加しているのに腐食する原因がわからないので、蒸気配管の腐食を改善して欲しいとのご相談をいただきました。

現場の状況

ご相談を受けた工場様は、規模も大きく工場内には蒸気配管が何百メートルも張り巡らされていました。

配管に溜まったドレン水(復水)を排出するスチームトラップが設置されたドレンピットは、サビで真っ赤に染まっている状態でした。

この現象は、蒸気が通っている配管や設備全体で腐食が起こっていることになります。

蒸気配管腐食

蒸気配管の内側は、腐食し配管にはピンホールが空いて蒸気が漏れている個所もありました。スチームトラップも故障が多く蒸気が漏れるため、頻繁に交換をされていました。

工場全体で起きる蒸気漏れは、エネルギーコストの上昇につながるため改善が必要でした。

ボイラには、水処理薬剤(清缶剤)が添加され、定期的にボイラ水の水質分析をおこない管理が行われていました。

ボイラ薬注

トラブルの原因

ボイラ蒸気の腐食の原因は、ボイラ水に溶けている溶存酸素(水の中に溶けている酸素)と、蒸気に含まれる炭酸ガス(二酸化炭素)が、蒸気配管に溜まるドレン水(復水)に溶け込むことでpH(ペーハー)が低下し酸性化すると腐食が起こります。

ボイラに水処理薬剤(清缶剤)を添加していても、薬剤の種類によっては蒸気系統の腐食を防止する効果がない薬剤もあります。

ボイラ缶水は、スケールと腐食を防止するための薬剤を添加します。ボイラ缶水に使用する薬剤が一般的には清缶剤と呼ばれます。清缶剤は、主にボイラを守るための薬剤になりますので、蒸気ドレン水(復水)の腐食には別の薬剤が必要になります。

水質分析も定期的におこなわれていましたが、ボイラ缶水のみを分析されていた為、蒸気ドレン水の水質分析をおこなわれていませんでした。

そのため、蒸気系統でドレン水のpHが低下し酸性化していることが見過ごされていました。

ボイラー水の水質の悪化はボイラーにスケール障害を引き起こし、稼働効率の低下や燃料コストの増加などの問題につながる可能性があります。

さらに、蒸気の水質が悪いと配管や設備の腐食も起こります。これは蒸気ドレンの排水において酸性のガスが関与することが原因となっており、蒸気腐食を防ぐには、適切な水質管理が必要不可欠です。

トラブル改善のご提案

まずは、ボイラ缶水と蒸気ドレン水(復水)を採水し、水質分析をおこない現状の水質を把握することから始めました。給水の水質やボイラの使用状況から、最適なボイラ用の水処理薬剤の選定を行いました。

ボイラ薬剤には、大きく分けて、ボイラ本体を守る清缶剤と、蒸気系統を守る復水処理剤があります。これまで使用されていた水処理薬剤は、ボイラ本体のスケールと缶内の腐食を防ぐ効果だけの清缶剤が添加されていました。そこで、清缶剤に加え復水処理剤の効果がある複合処理のボイラ薬剤をご提案いたしました。

毎週、ボイラ缶水と蒸気ドレン水を採水し水質分析を行い、分析結果を見ながら薬剤の注入量を調整しました。1ヶ月もすると蒸気配管からは、サビも出ない状態まで改善し腐食のトラブルは改善することができました。

写真は、蒸気配管から採水した、ドレン水(復水)を改善前と改善後です。

(左)改善前の腐食で鉄サビが混入した蒸気ドレン水  (右)改善後の蒸気ドレン水  

ボイラー水

ボイラ蒸気ドレン口より、ドレン水(復水)のサンプリングを行っています。

蒸気腐食の改善策

蒸気系統における腐食対策として、ドレン水(復水)のpHを7~9の範囲で管理するために復水処理剤を添加しました。

その理由としては、鉄ではpH8~9、銅ではpH7~8の弱アルカリ性を維持することで、これらの金属の腐食量を減少させることができるからです。

pHが低すぎると鉄の腐食が進行してしまいます。一方、pHが高くなりすぎるとアルカリ腐食が発生するため、蒸気ドレン水(復水)のpHを適切な範囲に維持することが非常に重要です。

ボイラ水質管理の点検報告書

改善後は、月に一度、ボイラ缶水と蒸気ドレン水(復水)を採水し分析をおこない、水質に異常が無いかチェックします。水質に問題があれば、原因を都度調査し改善案を検討するなど、水質の安定に努めています。現場での点検作業が終わると、設備ご担当者様や関係部署へメール一斉送信でPDF化した点検報告書をお送りしています。

水質改善によるコスト削減のメリット

定期的に、水質分析をおこない水質の変化を数値で把握することで、コスト削減にも寄与することができました。

改善効果① 給水量削減、燃料費削減、二酸化炭素(Co2)削減

定期的に水質分析しトレンドを見ると、ボイラ水の濃縮が低いことがわかりました。ブロー率を改善することで濃縮を高め、給水量を削減することをご提案。

ブロー率の設定を下げて給水量が減ったため、ボイラの燃料費が削減することができました。ボイラの燃焼を減らすことができたため、結果、コスト削減と二酸化炭素(Co2)排出量の削減につながりました。

ご提案したボイラ薬剤は、スケール剥離作用の効果があるため、管内に付着したスケールを剝がすことで更なるエネルギーコスト削減につながります。

改善効果② ボイラ薬剤の使用量削減

改善効果①でブロー量を削減したことで、ボイラ水の濃縮が高まりました。

濃縮が上がることで水中での薬剤濃度(清缶剤)も上昇し、腐食を防ぐpHが基準値内で高めに推移していることがわかり、ボイラ薬剤(清缶剤)の添加量をおさえ、pHを基準値内の低い値で水質管理することで、ボイラ薬剤の使用量を大幅にコスト削減することができました。

お客様の声

「ボイラに薬剤を入れていたので、水質には問題ないと思っていましたが、新しく導入した設備が腐食ですぐにジャケットに穴が開き、配管の老朽化も激しく、何が原因かまったくわからず困っていましたが、原因を特定していただき、腐食が改善できすごく助かりました。その後も、水質管理をしっかりと行っていただいているので、設備トラブルもなく安心して管理をお任せしています」

記事を書いた人

杉山 哲也

株式会社セールスエンジ 代表取締役社長

杉山 哲也

「お客様の『困った』を解決し、日本製造業の生産性向上に貢献する」を理念に、冷却塔の水質管理やメンテナンスで工場の安定稼働を支える専門家。ブログでは、冷却塔や水処理に関する役立つ情報を発信しています。
冷却塔のトラブルでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

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