Vol.57 小型バイナリー発電設備におけるシリカスケール障害の改善事例
こんにちは、冷却塔トラブル改善プロ、株式会社セールスエンジの杉山です。今回は、小型バイナリー発電設備におけるシリカスケール障害のトラブルと、その改善事例についてご紹介します。
概要
地熱を利用したバイナリー発電設備では、冷媒ガス(代替フロン)の冷却に冷却水が使用され、冷却塔(クーリングタワー)を通じてその温度を下げています。
地熱の出る地域は火山性の地質であることが多く、水にシリカ(ケイ酸)が多く含まれているケースがあります。そのため、水質管理が不十分だとシリカスケールの付着が発生し、設備トラブルにつながります。
本記事では、新エネルギーとして注目される小型バイナリー発電設備で実際に起こったスケール障害の事例と、その解決方法・改善結果について解説します。

お客様のお困り事
小型バイナリー発電所を運営されるお客様は、以下のような問題を抱えていらっしゃいました。
- 水処理剤の効果に不満
発電機メーカーから推奨された固形タイプ水処理剤を使用していましたが、冷却塔の充填材にスケールがひどく付着し、目詰まりを頻繁に起こしていました。そのため、定期的な清掃が必要となり、水処理剤の効果を実感できず困っておられました。 -
発電効率の低下
凝縮器(コンデンサー)内にスケールが付着し、冷媒ガスの冷却効率が低下。その結果、発電効率も下がり、売電量の減少と収益の悪化につながっていました。 -
スケール洗浄による腐食リスク
シリカスケールが発生するたびに化学洗浄を行っていましたが、凝縮器(コンデンサー)にはステンレス製のプレート式熱交換器が使用されていたため、塩酸による洗浄では腐食やピンホールによる水漏れのリスクが懸念されていました。

トラブル改善のご提案
現場の設備構成と水質を詳細に調査し、トラブルの根本原因を突き止めました。
- 水質分析の実施
冷却水の水質を徹底的に分析した結果、スケールの主成分がシリカであり、水の濃縮が進行していたことが判明。従来使用していた水処理剤では、スケールの抑制効果が不十分であることが数値的に確認されました。 - 水処理薬剤の見直し
シリカ対応型のスケール防止剤を導入し、自動ブロー装置による濃縮管理を実施。さらに、電気伝導率の適正管理によって、冷却水の状態を改善しました。 - 定期清掃の実施
水処理薬剤を使用していても、冷却塔には外気から混入する塵や埃などが堆積し、ストレーナーや凝縮器の詰まりの原因になります。これを防ぐため、年1回の定期清掃を提案・実施しました。 - 定期的なメンテナンス計画の策定
冷却水の水質モニタリングと設備の定期点検スケジュールを策定し、トラブルの未然防止に努めました。

結果
- 冷却効率が向上し、バイナリー発電の発電効率が改善。
- 凝縮器の腐食が抑制され、設備の延命化を実現。
- 発電機のダウンタイムが解消され、安定した売電収入が得られるようになった。
まとめ
バイナリー発電機の冷却水トラブルは、売電収入に大きな影響を及ぼします。特に水を大量に使用する設備では、水質管理の重要性は非常に高く、怠ると深刻なトラブルにつながります。
今回の事例のように、適切な水処理と定期的なメンテナンスを行うことで、トラブルを未然に防ぎ、設備の安定稼働と長寿命化が可能です。ぜひ、冷却水の管理の重要性を再認識するきっかけとして頂ければ幸いです。
ご利用いただいている水質管理サービスは、こちらになります。
ご一読くださりありがとうございました。
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