株式会社セールスエンジ

「設備の未来(あした)をささえる」
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冷水系統のブライントラブルはプロピレングリコール劣化が原因

食品工場の冷水系統でプロピレングリコール系ブラインを使用している現場から、次のような相談を受けることがあります。

チラーが凍結異常で停止する。
ストレーナーの詰まりが頻発する。
配管や熱交換器から水漏れが発生する。

トラブルが起きるたびに現場は対応に追われ、
「またか…」という空気が流れます。

しかし、こうしたトラブルの多くは、チラーや配管そのものの不具合ではありません。冷水系統を循環しているプロピレングリコール系ブラインの劣化が、時間をかけて進行していた結果であるケースがほとんどです。

冷水系統のプロピレングリコール系ブラインは、気づかれないまま劣化する

冷水系統は密閉されているため、「冷却水は汚れにくい」「ブラインは長持ちする」と思われがちです。

しかし実際には、

  • チラー運転による温度変化の繰り返し

  • わずかな空気(酸素)の混入

  • 配管・熱交換器との金属接触

といった条件が常に存在しています。

この環境下でプロピレングリコール系ブラインは、少しずつ性質を変え、確実に劣化していきます。

ブライン劣化は「pH低下」から始まる

プロピレングリコール系ブラインの劣化で、最初に現れる変化は pHの低下 です。

この段階では、

  • 見た目に大きな変化はない

  • 冷却性能も問題なく見える

  • 運転データにも異常が出ない

ため、劣化は見逃されがちです。

しかし内部では、防食剤や予備アルカリが消耗し、冷水配管や熱交換器を守る力が着実に弱くなっています。

腐食とスライムは、同時に進行する

pHが低下した状態で運転が続くと、冷水配管や熱交換器の内面では腐食が始まります。

さらに、プロピレングリコールは生分解性を持つため、防腐剤の残存率が低下すると、カビや微生物が繁殖しやすい環境になります。

その結果、

  • 腐食生成物

  • 微生物由来のスライム

が同時に発生し、
冷水系統を循環するようになります。

ストレーナー詰まりは「最初に見える警告」

腐食生成物やスライムは、最終的にストレーナーで捕捉されます。

最初は
「少し汚れている」
という程度ですが、清掃してもすぐに詰まるようになります。

この時点で現場では、

  • ストレーナー清掃を繰り返す

  • 一時的に流量を回復させる

といった対応になりがちですが、
詰まりは結果であって、原因ではありません。

流量低下がチラーを追い込む流れ

ストレーナー詰まりが進行すると、冷水流量は確実に低下していきます。

流量が不足した状態で運転が続くと、チラー内部の蒸発器では十分な熱交換ができず、冷水が必要以上に冷やされてしまいます。

その結果、蒸発器の一部で氷結が起こりやすくなり、チラーは自己保護のために凍結異常として停止します。

現場では、

「急にチラーが止まった」
「夏場なのに凍結エラーが出た」

という形でトラブルが表面化しますが、その原因が 流量低下にあった とは、なかなか結びつきません。

設備トラブルが続く → 原因はブライン → しかし入替えは高額

原因を調べていくと、ブラインの劣化が根本原因だと分かることは少なくありません。

しかし、ここで次の問題に直面します。

ブライン入替えに伴う主なコスト

  • ブライン原液代

  • 希釈・濃度調整作業

  • 既存ブラインの産廃処理費

  • 系内洗浄(劣化生成物・スライム除去)

  • 工事費

  • 人件費

  • 設備停止に伴う機会損失

これらが重なることで、
数百万円〜数千万円規模 になるケースも珍しくありません。

「劣化しているのは分かっているが、簡単には入れ替えられない」現場が頭を抱える理由が、ここにあります。

ブライン劣化 × 設備老朽化=企業の大きな損失

劣化したプロピレングリコール系ブラインを使い続けることで、

  • 冷水配管の腐食進行

  • 熱交換器の寿命短縮

  • 水漏れ・破損

  • 突発停止による生産ロス

が重なり、これは単なる保全費用ではなく、企業にとっての大きな損失となって表れます。

普段の水質管理が、最もコストメリットが高い

ここで重要なのは、ブラインは「劣化してから入れ替える」よりも、「劣化させない」方が圧倒的に安いという点です。

  • 月1回のブライン濃度・pH確認

  • 半年に1回の詳細なブライン水質分析

これを行うことで、

  • 不要な全量入替えを回避できる

  • 冷水系統を長く安定稼働させられる

  • 突発トラブルを未然に防げる

結果として、
数百万円〜数千万円規模の支出を防ぐことが可能になります。

最後に|まずは「今の状態」を知ることから

ブラインの劣化は、見た目や感覚だけでは判断できません。

冷えている間は問題なく見えても、内部では確実に劣化が進行していることがあります。

もし、

  • 冷水系統のトラブルが続いている

  • プロピレングリコール系ブラインを長年分析していない

  • ブライン入替えコストに不安がある

という状況であれば、まずは 今のブライン状態を正しく把握すること が重要です。

ブラインは、ただの不凍液ではありません。
冷水系統を守り、設備寿命と企業の損失を左右する重要な設備の一部です。

記事を書いた人

杉山 哲也

株式会社セールスエンジ 代表取締役社長

杉山 哲也

「冷えない」「流れない」「詰まる」その時の不安を、すぐに解消できる存在でありたい。工場の安定稼働を陰で支える“縁の下の力持ち”として、冷却塔の管理に取り組んでいます。
このブログでは、専門的な内容をわかりやすく嚙み砕き、設備担当者の方がすぐに活かせるヒントを発信しています。
対応エリア:九州北部(福岡・熊本・佐賀・長崎・大分)

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