チラーと冷却塔を併用すると水トラブルが起きやすい理由
流量低下が引き起こす凍結異常とチラー停止
チラーと冷却塔を併用した冷却は、効率が良さそうに見えますが、実際には水トラブルが起きやすい運用の仕方です。
冷却塔の水は運転を続けるほど濃縮され、その水がピットを通じてチラー側に影響すると、冷却水の状態は一気に悪くなります。
水質が悪化すると、熱交換器の中にスケールやスライムがたまり、流れが悪くなります。その結果、冷却水やブラインの流量が下がり、蒸発器の一部だけが過剰に冷えてしまいます。
この状態をチラーが異常と判断すると、凍結防止が働き、機器を守るためにチラーは自動的に停止します。つまり、チラーが止まる原因は能力不足ではなく、水の流れが悪くなったことにあります。
また、ブライン(不凍液)を使っている場合でも、水質管理をしていなければ汚れやスライムが発生し、同じようにチラー停止につながります。「ブラインだから大丈夫」という考えは、決して安全ではありません。
チラーと冷却塔を併用している現場は多い
押出成形・射出成形工場を中心に、
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夏場はチラー運転
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気温が下がると冷却塔を併用
といった運用をしている現場は少なくありません。
省エネや冷却能力の補完という面では合理的に見えますが、水の流れと水質管理を誤ると、トラブルが急増する冷却水フローでもあります。

冷却塔の水は必ず「濃縮」する
冷却塔は蒸発によって水を冷やす設備です。
蒸発するのは水分だけで、
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カルシウム
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マグネシウム
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シリカ
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微生物
といった成分は水中に残り、運転を続けるほど濃縮していきます。
この冷却塔水は、チラーで使用することを前提とした水質ではありません。
ピットで水が混ざった瞬間、水トラブルが始まる
チラー水と冷却塔水が、
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同一ピットで受水されている
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オーバーフローや逆流がある
こうした構成では、濃縮された冷却塔水がチラー側に混入します。この時点で、チラー水は本来の清浄な冷却水ではなくなります。
水質悪化がチラー内部で起こす障害
水質が悪化した冷却水は、チラー内部の熱交換器(凝縮器・蒸発器)に影響を与えます。
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スケールの付着
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スライム(バイオ)の繁殖
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熱交換器内部の流路狭窄
これらが進行すると、熱交換器の詰まりが発生します。
熱交換器の詰まりによる流量低下が、凍結異常を引き起こす
ここが非常に重要なポイントです。
蒸発器側(熱交換器)が詰まると、
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冷却水(またはブライン)の流量が低下
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流れが偏り、局所的な過冷却が発生
します。
この状態になると、蒸発器の一部が凍結状態に近づきます。
チラーはこれを異常と判断し、
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凍結異常(凍結防止機能)が作動
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機器保護のためチラーが自動停止
という流れになります。
つまり、
チラーが停止する直接の原因は、冷却能力不足ではなく熱交換器の詰まりによる流量低下であるケースが非常に多いのです。
ブラインを使用していても水質管理は必要
よくある誤解が、ブラインを使っているから
凍結しない
水質管理は不要
という考えです。
しかしこれは間違いです。

ブラインでもスライムは発生する
ブラインは不凍液ですが、
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水分を含んでいる
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温度条件が揃う
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微生物が侵入する
ことで、スライム(バイオ)が繁殖します。
ブライン系統でも凍結異常は起きる
スライムや汚れによって、
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蒸発器内部が詰まる
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流量が低下する
と、ブラインを使用していても、
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局所的な過冷却
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凍結異常検知
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チラー停止
が発生します。
不凍液=安全ではありません。
なぜ洗浄しても再発するのか
併用による水トラブルが起きると、多くの現場では熱交換器の洗浄が行われます。
洗浄後は一時的に改善しますが、
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冷却塔水の濃縮
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水の混在
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水質管理なし
という条件が変わらなければ、必ず再発します。
さらに、洗浄を繰り返すことで、
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金属表面の劣化
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腐食の進行
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水漏れリスクの増大
といった別のトラブルを招くことも少なくありません。
必要なのは「水質管理による予防保全」
チラーと冷却塔を併用する場合、必要なのは事後対応ではありません。
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冷却塔水の濃縮を前提にした設計
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水を混ぜない構造
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冷却水・ブラインの水質管理
この予防保全があって、はじめて安定運転が可能になります。
まとめ
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チラーと冷却塔の併用は水トラブルが起きやすい
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冷却塔水の濃縮がチラー側に悪影響を与える
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熱交換器の詰まりで流量が低下する
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流量低下が凍結異常を引き起こし、チラーが停止する
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ブライン使用時でも水質管理は必須
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洗浄ではなく、水質管理による予防が重要
チラーが止まる原因は、制御や冷媒ではなく、水であることが非常に多いです。
併用運転をしている現場ほど、一度「水の流れ」と「水質」を見直す価値があります。
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