冷却塔(クーリングタワー)の濃縮を防ぐ水処理技術
冷却塔(クーリングタワー)の濃縮を防ぐ水処理技術
冷却塔(クーリングタワー)は蒸発によって水量が減少し、同時に水中のミネラルや不純物が濃縮されます。濃縮倍数を設定し、水質管理することは冷却水の品質を維持し、スケール障害や腐食、スライムの増殖を防ぐために重要です。
ここでは、冷却塔で起きる濃縮を防ぐ方法について解説しています。
冷却塔(クーリングタワー)で使用する冷却水は、循環しながら使っているうちに水が濃縮し、水質が悪化していきます。冷却水トラブルを引き起こす一番の原因が、水の濃縮です。
水の濃縮とは何か?水の濃縮を防止する方法は?
冷却塔の水処理を行う上で濃縮は非常に重要です。濃縮に加えて、水処理技術について詳しくお答えします。
水の濃縮とは?
水には透明でも、目には見えない様々な不純物(ミネラル成分=カルシウム、マグネシウム、シリカなど)が溶けています。水の濃縮とは、水分が蒸発してミネラル成分などの不純物の濃度が高くなることを指します。
分かりやすくたとえると、みそ汁を火にかけて煮詰めると、みそ汁がどんどん濃くなっていき、みそが濃厚になります。これは、水分だけが蒸発して、みその成分だけが残る現象です。つまり、「みそ汁の濃縮」と言えます。
冷却塔(クーリングタワー)で循環する冷却水も同じように、「みそ汁の濃縮」と同様の現象が起きています。
冷却水の水温を下げる仕組みは、冷却塔(クーリングタワー)内で水をシャワー状に散水し、冷却ファンで吸い込む風を水にあてて蒸発させることで、「気化熱」によって冷却水の水温を下げています。その後、冷やされた水は設備へ送られ、熱を奪い水温が上がり、再び冷却塔に戻ってきます。冷却水は、このようなサイクルを繰り返します。
水は蒸発を繰り返しますが、水に含まれたミネラル分は水中に残り、蓄積されていきます。これが水の濃縮です。
冷却塔(クーリングタワー)が水を蒸発させている様子は、普段は見えませんが、湿度が高い時には冷却塔から白い煙がもうもうと出ることがあります。この白い煙は、冷却塔が水を蒸発させている水蒸気です。
水の濃縮が進むと、水中のミネラル成分(カルシウム・マグネシウム・シリカなど)の不純物が飽和状態になり、スケール化して固まります。さらに、塩分も濃縮されるため、腐食を引き起こします。外気と一緒に吸い込まれた塵や微生物も、冷却水中でスラッジとして堆積していきます。藻や細菌、レジオネラ菌なども濃縮によって増殖し、衛生上の問題を引き起こすことがあります。
冷却塔(クーリングタワー)で起きる濃縮の防ぎ方
では、冷却塔(クーリングタワー)で起こる濃縮は、どうすれば防止できるのか?
水の濃縮を防ぐためには、古くなった冷却水を排水し、新しい水と入れ替える必要があります。大きく分けて、3っのブローダウン方法がありますのでご紹介します。
連続ブローダウン
冷却塔の手動補給水バルブを開けておき、連続的に水を給水する方法です。
簡単に言うと、水の無駄遣いです。
給水バルブを開けるだけで、簡単に濃縮を防ぐことができます。配管工事などの初期費用はかからない代わりに、ランニングコストで水の使用量が増えます。
連続ブローダウンは、以下の場合に有効です。
- 井戸水などで水を無制限に使用できる場合
- 工業用水の契約単価が低い事業所
強制ブローダウン
冷却塔(クーリングタワー)の下部水槽に設置された強制ブロー装置を使用して、一定量の冷却水を排水する方法です。
ブローダウンの量は、冷却水の循環量に対して約0.5%を排水し、新しい水と入れ替える必要があります。循環量は、クーリングタワーの銘板に記載されていますので、ご確認ください。
例として、循環水量が40 m3/hrの場合、0.5%を掛けると、1時間あたり200 L/hr(ドラム缶1本分)を排水し続けなければなりません。これは、チョロチョロと水を捨てる程度の量です。
自動ブローダウン
自動ブロー装置を設置し、水の中の不純物が増えると電気の伝導率が高くなる性質を利用して、自動的にブローダウンをおこない水質管理する方法です。
電気伝導率(汚れ度)センサーで冷却水を測定し、数値が上がると自動で給水バルブを開き、水を補給して新しい水と入れ替えます。水が汚れた時だけ自動的に排水するので、節水できるメリットがあります。特に、水代が高い地域にはおすすめです。
以下の写真が、自動ブロー装置です。
冷却塔(クーリングタワー)の補給水配管を分岐させて、自動ブロー弁を取り付けます。
以下の写真が、自動ブロー弁(電動弁)です。
自動ブロー弁は濃縮が高くなった時に、自動で開き給水します。水が入れ替わり電気伝導率センサーの数値が下がったら、バルブは閉じられます。
冷却水の水処理が必要な理由
冷却塔(クーリングタワー)で使用される冷却水は、循環利用するため様々な水の障害が発生します。濃縮によるスケール障害や腐食障害、藻やコケ、レジオネラ属菌などの細菌類の増殖によるスライム障害、それらが引き起こすトラブルを防止するには水処理薬剤の添加と、適正な水質管理を行える水処理技術が必要です。冷却水の濃縮を適切に管理することで節水(補給水・ブロー排水量の削減)や省エネとなり、高濃縮運転によって水処理薬剤の使用量削減でコストダウンへとつながります。
冷却水の濃縮について動画で解説
冷却塔(クーリングタワー)のトラブル改善に焦点を当て、冷却水の濃縮が引き起こす問題とその防止方法について説明しています。冷却水の濃縮は、水中の不純物濃度を高め、ミネラル成分の固化や腐食を引き起こします。この動画では、濃縮を防ぐための3つの方法(連続ブローダウン、強制ブローダウン、自動ブローダウン)を紹介しており、特に自動ブローダウンには節水できるメリットがあります。
まとめ
冷却塔(クーリングタワー)は常に水を蒸発させ、濃縮しています。冷却水の濃縮を防ぎ、スケール障害や腐食、スライムの増殖を防ぐためには、ブローダウンによる新しい水との入れ替えが必要です。水質管理を行うことで設備トラブルも減少します。
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