冷却水のpHがアルカリ性になる原因
冷却水のpHがアルカリ性になる原因とよくあるトラブル
冷却塔(クーリングタワー)で使用される冷却水は、一般的にpH(ペーハー)がアルカリ性になります。なぜ、アルカリ性になるのかについてご説明いたします。
冷却塔(クーリングタワー)冷却水のpHがアルカリ性になる理由
冷却塔(クーリングタワー)で使用される冷却水が循環利用される過程で、そのpHが上昇し、アルカリ性になる現象は、水中の炭酸ガスの影響によるものです。通常、水中には炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んでおり、これにより水のpHは低く酸性に傾きます。身近な例を挙げると、炭酸ガスを含む炭酸飲料はその酸性度から、pHが低い状態になります。ただし、この炭酸ガスは時間とともに抜けていき、放置すれば炭酸飲料のpHは上昇していきます。
冷却水も同様に、循環中に炭酸ガスが抜け出すことで、水中のpHが上昇し、アルカリ性に傾くのです。このアルカリ性は通常の状態であり、冷却塔(クーリングタワー)での適切な運用下では問題ありません。逆に、冷却水が酸性に傾く場合は、外部からのガスの吸入が懸念され、腐食が発生しやすくなります。
したがって、冷却水は常に水質が変化するため、定期的な管理が不可欠です。適切な水質管理を行うことで、冷却塔の設備の劣化やトラブルを防ぎ、安定した運用を確保することができます。
pHが酸性化するケース
これは例外的なケースですが、冷却塔(クーリングタワー)の設置場所によっては、工場などから排出されるばい煙(NOxやSOxなど)を吸い込むことで、冷却水のpHが異常に低下し酸性化することがあります。
pH(ペーハー)の排水規制と中和処理
高いpH(ペーハー)は排水規制の対象となりなります。そのため適切な対策と中和処理が必要です。
水質汚濁防止法による排水規制
水質汚濁防止法で指定を受けた「特定施設」の工場や事業所では、法的な排水規制があります。この法律により、排水されるブロー水のpH(ペーハー)が基準を超えると、排水が許可されません。冷却水は循環を繰り返すうちにpH(ペーハー)が上昇し、排水基準を超えてしまうことがあります。
pH(ペーハー)が高いと困るのは、冷却塔(クーリングタワー)から排水されるブロー水が排水基準pH5.8~8.6(海域にあってはpH5.0~9.0)を超えるので、工場外へ排水することができなくなります。
冷却塔(クーリングタワー)へ補給される前の水は、一般的な水質ではpH7前後の中性です。ですが、冷却水は循環を繰り返しているうちに、pH9.0前後くらいまで上昇することがあります。
適切に排水するには、排水基準値のpH8.6以下に中和処理をしなくてはいけません。
中和処理
pHが基準を超えた場合は、中和処理をおこないます。
これには、硫酸や塩酸の添加、炭酸ガスの吹き込みなどがあります。
定期的な監視
冷却水のpHが高いとスケール障害につながるため、定期的に監視し、必要に応じてブローで水の入れ替えをおこない調整を行います。当社が管理をおこなっているお客様では、水処理薬剤の添加やブローの管理で冷却水のpHを8.0~8.6程度に抑えて水質管理をおこなっています。定期的に水のサンプリングをおこない水質分析書の提出をおこなっています。
また、冷却塔からでるブローの排水は、地域ごとの放流基準にしたがい、工場内の総合排水設備などへ送り適切に処理をおこない放流しています。
動画で詳しく解説
YouTubeの動画で、冷却塔(クーリングタワー)のpHについて解説しています。ぜひご視聴ください。