【チラーと冷却塔(クーリングタワー)の違い】設備初心者でもわかる!役割と冷却温度の限界
こんにちは、冷却塔トラブル改善プロ、株式会社セールスエンジの杉山です。
今回は、「チラーと冷却塔(クーリングタワー)の違いがよくわからない」という設備担当者さん向けに、それぞれの役割や冷却性能の“限界”について、やさしく解説していきます。

チラーと冷却塔、同じ“冷やす”装置だけど役割が違う
まず大きな違いは、「何を冷やしているか」です。
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チラー:冷たい水をつくる装置(冷水供給)
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冷却塔:温まった水を外気で冷やす装置(放熱装置)
このように、チラーは冷水をつくる“製造機”、冷却塔は水を再び冷やして使い回す“再生機”とも言えます。
チラーのしくみと特徴
チラーは、冷媒ガスを使って水を冷やし、5〜10℃程度の冷水を安定して供給します。
設備や空間を冷やすためには、ある程度“低い温度の水”が必要です。その温度帯をつくれるのが、チラーの強みです。
冷却塔のしくみと冷却の限界
冷却塔は、上から水を落としながら、ファンで風を当てて蒸発させることで水温を下げる仕組みです。この「蒸発冷却」は自然の力を使った優れた方法なんですが、実は、明確な限界があります。
冷却塔ではなぜ10℃以下の水をつくれないのか?
※冷却塔が冷やせる水温の下限は、「外気の湿球温度+2〜5℃」が目安です。
ここで大事なのが、「湿球温度」という考え方です。これは、その空気環境で蒸発冷却ができる理論上の最低温度のこと。
たとえば、冬の外気で湿球温度が5℃だったとしても、冷却塔で冷やせる水温はせいぜい7〜10℃程度。
つまり、冷却塔では10℃以下の冷水はつくれません。
低温の冷水(5℃や7℃)が必要なときは?
その場合は、チラーの出番です。
チラーは冷媒の力で、外気温に左右されずに安定して5℃〜7℃の冷水をつくることができます。
なので、空調設備、精密機械、食品工場など低温管理が必要な現場では、冷却塔だけでは足りず、必ずチラーが必要になります。
チラーと冷却塔の違いをまとめると
項目 | チラー | 冷却塔(クーリングタワー) |
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役割 | 冷たい水をつくる | 温まった水を外気で冷やす |
冷却方式 | 冷媒(機械式冷却) | 蒸発冷却(自然放熱) |
水温の下限 | 約5〜7℃ | 湿球温度+2〜5℃(例:10℃前後) |
必要な場面 | 冷却が厳密な機器や製造現場 | チラーや空調の補助冷却 |
よくある誤解
「冷却塔があれば冷たい水が作れる」と思われがちですが、冷却塔で作れるのは10〜30℃程度の“ぬるめの水”です。
本格的な“冷水”をつくりたいなら、必ずチラーが必要です。この認識がないと、設備設計やトラブル対応で判断を誤ることになります。
動画で解説
YouTubeの動画では、「チラーと冷却塔の構造と冷却温度の違い」を実際の図解を用いて解説しています。冷却方式の違いや温度の限界について、現場感覚で理解できる内容になっています。
まとめ
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冷却塔は外気と水を接触させて“再利用するために冷やす”装置
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チラーは冷媒の力で“冷たい水を新たに作る”装置
そして、冷却塔の限界は湿球温度+2〜5℃程度。
10℃以下の冷水を作るには、冷却塔ではなくチラーが必須です。
この違いをしっかり理解しておくと、トラブルの予防にもなりますし、今後の設備計画にもきっと役立つはずです。
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