冷却塔(クーリングタワー)のレジオネラ属菌繁殖について
レジオネラ属菌とは
レジオネラ属菌は、自然界(河川、湖水、温泉や土壌など)に生息している細菌で、感染するとレジオネラ症を引き起こします。
レジオネラ症は、レジオネラ菌によって引き起こされる肺感染症です。症状は、咳、発熱、食欲不振、頭痛、倦怠感、無気力、筋肉痛、下痢、昏迷を起こします。
約半数の患者は痰を伴い、約3分の1の患者は、血液混じりの痰が現れます。疾患の重症度には、軽度の咳から肺炎まで幅があり、呼吸不全や多臓器不全をともなう肺炎を起こすことで、死に至ることもあります。死亡率は、5~10%と言われています。
感染経路は、冷却塔(クーリングタワー)、温水と冷水の水まわり、加湿器、ジェットバス、温泉等です。感染は免疫力の弱った入院患者では、細菌を含んだ水や氷を誤飲することででも起こり得ます。
冷却塔(クーリングタワー)とレジオネラ属菌
冷却塔(クーリングタワー)は、開放循環冷却水系に関連しており、レジオネラ属菌の繁殖によりレジオネラ症という感染症の発生源となることがあるとされています。レジオネラ属菌は自然界に生息していますが、土埃などを介して冷却塔(クーリングタワー)の内部に入り込んでしまう可能性があります。また、消毒されていない水や、入れ替わりの少ない水、水温 20℃から50℃前後の水に混入した時、増殖するおそれがあると言われており、適切な管理が行われていない冷却塔(クーリングタワー)内はレジオネラ属菌の繁殖に好適な環境となっているため、増殖してしまいます。
レジオネラ属菌が繫殖した冷却塔(クーリングタワー)は、ファンの風によってエアロゾルと呼ばれる飛散水によってレジオネラ属菌が環境中にまき散らされ、近くの人が空気感染によって吸入して呼吸器系に感染する恐れがあります。
レジオネラ症の兆候と症状
レジオネラ症の兆候と症状は、咳、息切れ、高熱、筋肉の痛み、頭痛などです 。 また、吐き気、嘔吐、下痢も現れることがあります 。 これらの症状は曝露後2日から10日ほどで現れることがあります。昨今の新型コロナウイルスの感染症状とよく似た症状です。
レジオネラ属菌の検出基準
レジオネラ属菌の検出基準は以下のように定められています。
- レジオネラ属菌数の目標値は10CFU/100mL未満です。
- レジオネラ属菌が検出された場合は、直ちに清掃・消毒等の対策を講じます。
- 対策実施後は、検出菌数が検出限界(10CFU/100mL未満)以下であることを確認します。
この基準は、レジオネラ症を防ぐために重要です。指針に従い、定期的な検査と適切な処理を行うことが重要です。
レジオネラ症による事故事例
2023年に宮城の病院施設で起きたレジオネラ感染症は、冷却塔(クーリングタワー)からのレジオネラ属菌による感染症で死亡事故が発生しました。その事故では、病院施設の屋外に設置された空調の冷却塔(クーリングタワー)から基準値以上のレジオネラ属菌が検出され、それがレジオネラ感染症の原因ではないかと言われています。冷却塔(クーリングタワー)の適切な水処理が行われていれば、防ぐことができた事故だったのではないかと思います。定期的な清掃と適切な水処理が、冷却塔(クーリングタワー)の延命はもちろん、感染症等の事故も防ぐことができます。
レジオネラ属菌に関連する法規制
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厚生労働省によるレジオネラに関する法規制厚生労働省は、公衆浴場や旅館の浴槽水中のレジオネラ属菌の検出状況について調査しており、営業者が行う自主検査結果によると、公衆浴場の10.4%(677件/6,745件)で検出されたと報告されています。これに基づき、浴槽水からのレジオネラ属菌の検出に対する対策が重要とされています。
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感染症法におけるレジオネラ対策
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)において、レジオネラ症は四類感染症に分類され、病原体であるレジオネラ属菌による感染症として取り扱われています。 -
建築物における対策と法律規制
建築物におけるレジオネラ症防止に関しては、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づき、特定建築物の維持管理権原者に対して、レジオネラ属菌に関する対策が求められています。 -
レジオネラ属菌検出時の対応手引き
浴槽水からレジオネラ属菌が検出された場合、感染防止のための対策を直ちに行う必要があります。また、汚染原因の究明や管理方法の改善が重要視されています。 -
地方自治体の条例改正による対策強化
地方自治体もレジオネラ症の発生防止に取り組んでおり、旅館業法や公衆浴場法に基づく条例を改正して、入浴施設からのレジオネラ症の発生防止対策を強化しています。 -
その他の関連情報
レジオネラ属菌による感染を防止するためには、循環式浴槽や中央給湯設備などで衛生上の措置を講ずる必要があります。ただし、法律規制を受けない施設も存在することに留意が必要です。これらの情報からわかるように、日本では厚生労働省を中心にレジオネラ属菌に関する法規制や対策が推進されており、公衆浴場や建築物などでの感染症予防が重要視されています。
冷却塔(クーリングタワー)におけるレジオネラ属菌の予防策
冷却塔(クーリングタワー)における効果的なレジオネラ対策をご紹介いたします。
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冷却水に殺菌剤の添加
冷却水に定期的に殺菌剤を添加して、レジオネラ菌の増殖を防ぐことが重要です。 -
定期的な点検と清掃
月に1回程度、冷却塔の点検と清掃を行うことで、汚れやバクテリアの増殖を防ぎます。 -
化学的洗浄
冷却塔の使用開始時と終了時に、殺菌剤(過酸化水素など)を使用して化学的な洗浄を行うことで、菌の繁殖を防ぎます。 -
水の入れ替え
冷却塔の下部水槽や充填材の汚れをデッキブラシや高圧ジェット洗浄で落とし、水を定期的に入れ替えることが大切です。 -
冷却水温度の管理
レジオネラ菌は特に一定の温度範囲で繁殖しやすいため、冷却水温度の適切な管理が重要です。 -
バイオフィルムの予防
原生動物や藻類によるバイオフィルムの形成を防ぐために、遮光や排気ダクトの位置変更などの改善を行うことが効果的です。 -
水処理対策
殺菌剤の効果を持続させるために、冷却水の濃縮管理や水処理対策が必要です。 -
注意点
次亜塩素酸などの塩素系殺菌剤は、アルカリ性(pH9以上)の水質では、消毒効果が著しく減少します。その場合は、別の殺菌手段が必要となります。
レジオネラ症の予防には、これらの対策を組み合わせて実施することが大切です。建築物や冷却塔における衛生管理は、公衆衛生の観点からも重要な取り組みとなります。
レジオネラ属菌の塩素に対する抵抗性
レジオネラ属菌に関するご質問
冷却水系はレジオネラ症感染のリスクをどのように増加させる可能性がありますか?
冷却水系は、レジオネラ症感染のリスクを増加させる可能性があります。冷却水系内の冷却塔(クーリングタワー)や配管壁面にスライム汚染やバイオフィルムが発生し、これらの環境はレジオネラ属菌の繁殖に適しています。その結果、冷却水からのレジオネラ感染のリスクが高まることがあります。
冷却塔におけるレジオネラ対策は何が重要なのか?
冷却塔(クーリングタワー)におけるレジオネラ対策の重要な点は、水の定期的な清掃と薬品による洗浄、冷却塔内での水しぶき(エアロゾロ)の拡散防止、そして定期的な水質検査と監視が重要です。これらの対策は、レジオネラ菌の大量発生を防ぎ、施設の安全性を確保するのに役立ちます。
水の循環施設や設備でのレジオネラ感染の危険性を測定するためにどのような検査が行われているか?
冷却水の循環施設や設備でのレジオネラ感染の危険性を測定するために、水質検査や生物活性度(ATP試験)などの検査が行われています。これらの検査は、レジオネラ菌の存在や活性度を確認し、感染リスクを評価するのに役立ちます。
冷却塔の設置位置とレジオネラ属菌の関係についてどのような情報がありますか?
冷却塔(クーリングタワー)の設置位置とレジオネラ属菌の関係についての情報は、冷却塔の冷却水温度がレジオネラ属菌の発生しやすい環境にあることが指摘されています。そのため、冷却塔と空調の外気の距離など、設置位置にも注意が必要です。厚生労働省の「レジオネラ症防止指針」に詳細が記載されています。
冷却塔施設の検査と管理に関して建築物衛生法はどのような規定を定めていますか?
建築物衛生法では、冷却塔施設の検査と管理に関して規定を定めています。具体的な内容は 、汚れの点検だけではレジオネラ属菌の存在を確認できないため、定期的な検査をお勧めしています。
動画で解説
YouTubeの動画でも、冷却塔のレジオネラ属菌について解説しています。ぜひご視聴ください。
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まとめ
冷却塔を含む水処理施設におけるレジオネラ属菌の管理は、公衆衛生上極めて重要です。定期的な清掃や適切な水処理を行うことで、感染リスクを最小限に抑えることができます。株式会社セールスエンジでは、専門知識と豊富な経験を活かし、冷却塔の水質管理やトラブル対策をサポートしています。安心して施設を運営するために、お気軽にご相談ください。