冷却能力低下の原因と対策:熱交換器のスケール付着
スケール付着による冷却能力の低下
熱交換器や凝縮器(コンデンサー)の表面にスケール(汚れや沈着物)が付着すると、冷却水が十分に熱を奪えなくなり、冷却能力が低下します。スケールは金属表面に蓄積し、熱の伝達を妨げるため、結果としてエネルギー効率が大幅に落ちるのです。
特に、冷却塔(クーリングタワー)を使用する工場では、水の蒸発によってミネラル分が濃縮され、スケールが発生しやすくなります。このスケールが蓄積すると、以下のような問題が起こります。
- 冷却能力の低下:必要な温度管理ができず、生産効率が低下
- エネルギーコストの増加:より多くの電力・燃料が必要に
- 設備のトラブル発生:熱交換器や配管の詰まり、機器の故障
スケールの付着がどれほど冷却能力に影響を与えるのか、具体的なデータを見てみましょう。
スケールの厚みと冷却能力の関係
日本冷凍空調工業会のデータをもとに、スケールの厚みが冷却能力に及ぼす影響を示すグラフを紹介します。
スケール厚み | 冷却能力低下率 |
---|---|
0.2mm | 約5%低下 |
0.4mm | 約15%低下 |
0.6mm | 約25%低下 |
0.8mm | 約30%低下 |
このデータからもわかるように、わずか0.4mmのスケールが付着するだけで15%ものエネルギーロスが発生します。さらに、0.8mmのスケールが溜まると冷却能力は約30%も低下し、機器の過負荷や故障のリスクが高まります。

出展:ガス吸収冷温水器・吸収冷凍機 新しい運転管理の実務 (社)日本冷凍空調工業会
スケールが引き起こす問題
スケールの付着は、冷却塔や熱交換器の効率低下だけでなく、工場全体の運用にも影響を及ぼします。以下のような具体的な問題が発生する可能性があります。
1. 冷却能力の低下
冷却水が十分に熱を奪えなくなるため、工場の製造プロセスや空調設備に悪影響を及ぼします。
2. エネルギーロスの増加
冷却効率が下がると、ポンプやファンの稼働時間が増加し、電気代・燃料費がかさみます。
3. ボイラーの効率低下
ボイラーでも同様の現象が発生し、スケールによる熱伝達効率の低下が燃料費の増大を招きます。
4. 設備のトラブルとメンテナンスコストの増加
スケールが蓄積し続けると、配管詰まりや機器の異常動作を引き起こし、最悪の場合、機器の交換が必要になります。
スケール付着を防ぐ重要性
スケールの付着は、気づかないうちに大きなエネルギー損失を引き起こします。冷却設備の効率を維持するためには、スケールを事前に防ぐ「予防保全」が不可欠です。
1. 燃料費・電気代の削減
冷却能力の維持により、余計なエネルギー消費を抑え、コスト削減につながります。
2. 生産効率の向上
冷却能力の低下を防ぐことで、設備トラブルを減らし、安定した生産を維持できます。
3. 設備寿命の延長
スケールによる機器の劣化を防ぎ、長期間の安定稼働を実現します。
スケール対策の具体的方法
スケール付着を防ぐためには、以下の対策を組み合わせることが有効です。
1. 冷却水の水質管理を徹底する
冷却水の水質管理を適切に行い、スケールの原因となるミネラルの蓄積を防ぎます。
2. 定期的な薬品洗浄(スケール除去)
スケールが軽度のうちに、専用の洗浄剤を用いて除去することで、機器の性能を維持できます。
3. 物理的な除去(ブラシ・高圧洗浄)
一部の機器では、ブラシや高圧洗浄を用いたスケール除去が有効です。
4. スケール防止剤の使用
スケール形成を抑える薬剤を添加し、スケールの発生を未然に防ぎます。
動画で解説
YouTubeの動画では、スケール付着による冷却能力の低下とその対策について詳しく解説しています。ぜひご視聴ください。
まとめ
スケールの付着は、冷却能力を大幅に低下させ、エネルギーコストの増加や生産効率の低下を招きます。そのため、定期的な点検と適切な予防策が不可欠です。
もし、冷却塔や熱交換器のスケールに関する問題でお困りの方は、専門家に相談することをおすすめします。適切なメンテナンスを行い、設備の長寿命化とエネルギーコストの最適化を実現しましょう。
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