開放式と密閉式冷却塔の違い
冷却塔(クーリングタワー)には、開放式冷却塔と密閉式冷却塔の2種類があります。その違いについて、ご説明をいたします。
開放式冷却塔とは
開放式冷却塔は、循環する冷却水に直接外気をあてて水温を下げます。メリットは、冷却塔の構造がシンプルなため安価であることです。
デメリットは、冷却水の水質が悪化すると冷却系統全体でスケール障害や腐食障害、藻の繁殖が発生することです。これらの障害から設備を守るために、冷却水の水質管理が重要となります。
密閉式冷却塔とは
密閉式冷却塔は、冷却水系統が密閉回路になっており、熱交換器の内部を冷却水が流れ、熱交換器の外側を散布水により冷却されます。メリットは、冷却水が外気に触れないため汚染されず、水の濃縮も起こりません。そのため、スケール障害が発生せず、設備が長持ちします。
デメリットは、冷却塔の構造が複雑なため高額であることです。開放式と比べて価格が約2~3倍します。外気と接触する散布水の水質管理を怠ると、銅コイルの伝熱面でスケール障害が発生し、冷却能力が低下します。また、密閉回路内の冷却水では溶存酸素の影響で金属の腐食が起きるため、防食剤の添加が必要です。
冬場は、冷却水が凍結すると銅コイルが破損しますので、凍結防止用ヒーターによる加温や密閉回路内の水を抜くなどの凍結対策が必要です。
動画で詳しく解説
YouTubeの動画で、開放式冷却塔と密閉式冷却塔の構造の違いについて詳しく解説していますので、ご視聴ください。
まとめ
冷却塔のスケール障害を放置すると、冷却不足や電力コストの増大、さらには設備寿命の短縮といったリスクにつながります。「密閉式冷却塔に替えないといけないのでは…」と思われがちですが、水処理薬剤の見直しやスケール清掃を行うことで、既存の開放式冷却塔でも十分に改善できるケースは多くあります。
密閉式は初期投資が大きく、運転条件によっては必ずしも万能とは言えません。だからこそ、まずは現状のスケール付着や水質の状態をきちんと把握し、最適な対応方法を検討することが大切です。
設備更新を含め、どの方法がベストなのかを判断するには、現場のデータをしっかり確認することが第一歩です。
冷却塔でスケールにお困りの際は、焦らずに現状を丁寧に見直してみることをおすすめします。
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