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射出成形機の冷却水トラブルを防ぐ!水質管理が生産効率を左右する

こんにちは、今回は射出成型機の冷却水トラブルと、それを防ぐための水質管理の重要性、さらにトラブルが起きた場合の改善方法についてお話しします。

冷却水の適切な管理は、単なる設備保全にとどまりません。

  • 歩留まり改善 → 不良品の削減
  • 生産効率の向上 → サイクル安定
  • コスト削減 → 設備寿命延長・電力負荷削減

このように、水質管理は工場全体の利益にも直結する大切な取り組みです。

射出成型機で冷却水が流れる主な部位

金型

製品の品質と成形サイクルを決める最重要ポイント。

冷却水路がスケールやスライムで詰まると、冷却効率が落ち、サイクル延長・寸法不良・不良率の増加につながります。

ホッパー下(フィードスロート)

シリンダー(スクリュー)入口の「喉元」を冷やし、熱がホッパーに入った原料に伝わらないようにしています。

ここが冷えないとペレットが軟化してブリッジや原料供給不良が発生。水路径が細いため、スケールや錆で詰まりやすい部位です。

オイルクーラー(油圧式)

油圧式では作動油を水冷式熱交換器で冷却しています。

水質が悪いとスケール付着で熱交換効率が下がり、油温高止まり・温度異常停止アラーム・油劣化といったトラブルを引き起こします。

温調器(モールド温調機/チラー)

金型温度を一定に保ち、成形条件を安定させる装置です。

ここも冷却水の水質が悪いとスケールで効率が落ち、冷却不足・不良品増加・設備故障のリスクが高まります。

除湿乾燥機(※水冷式の場合)

樹脂を乾燥させる工程で使用する除湿乾燥機には、凝縮器を冷やすための冷却水が流れます。また、循環する空気を冷却するアフタークーラーなどにも冷却水は使用されてます。

冷却水が汚れているとスケールやスライムで伝熱効率が低下し、乾燥能力が落ちて成形不良につながります。水冷式の場合は、ここも重要な管理ポイントです。

冷却水トラブルの改善方法

スケールの詰まりには酸洗浄が効果的

冷却水路に付着したスケールは、手作業でドリルなどで削っても奥の方まで取り除くことができません。

しかし、酸洗浄液による循環洗浄では、水管内に付着したスケールを溶解除去できます。

ただし、完全に閉塞すると洗浄液が通らないため、流量が低下し始めた時点で洗浄を行うことが重要です。

  • 金型やホッパー下 → 細径水路にあわせて薬液循環洗浄
  • オイルクーラーや温調器・除湿乾燥機 → 熱交換器内部のスケール除去

※酸洗浄は条件を誤ると腐食リスクがあるため、専門業者に依頼するのが安心です。

予防保全の基本は「水質管理」

冷却水トラブルを未然に防ぐには、日常的な水質管理が欠かせません。

  • スケール障害防止:濃縮管理・スケール防止剤投入
  • スライム障害防止:殺菌剤投入で藻やバクテリアの繁殖を抑制
  • 腐食防止:防食剤とpH管理で金属を腐食から保護

これにより、

  • 成形サイクルの安定
  • 設備寿命の延長
  • 稼働率の向上
  • 不良率の低下

といった効果が期待できます。

動画で解説

YouTubeの動画では、スケールで詰まった酸洗浄を行っている様子です。ぜひご視聴ください。

まとめ

射出成形機の冷却水は、金型・ホッパー下・オイルクーラー・温調器・除湿乾燥機(水冷式)といった複数の部位を流れています。

スケール詰まりには酸洗浄が有効ですが、流量低下を感じた時点で早めに洗浄することが大切です。

さらに、日常的な水質管理による予防保全こそが、歩留まり改善・生産効率向上・コスト削減へとつながります。

記事を書いた人

杉山 哲也

株式会社セールスエンジ 代表取締役社長

杉山 哲也

「冷えない」「流れない」「詰まる」その時の不安を、すぐに解消できる存在でありたい。工場の安定稼働を陰で支える“縁の下の力持ち”として、冷却塔の管理に取り組んでいます。
このブログでは、専門的な内容をわかりやすく嚙み砕き、設備担当者の方がすぐに活かせるヒントを発信しています。
対応エリア:九州北部(福岡・熊本・佐賀・長崎・大分)

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